浄蔵貴所

 晴れ空の京都東山です。今日は60日毎にめぐってくる庚申の日ですが、今年最後の納め庚申です。雙林寺から歩いて10分くらいのところにある八坂の塔の前に「八坂庚申堂」があります。正式には「金剛寺」といって、昨今、色とりどりの「くくり猿」がいわゆるインスタ映えすると一躍有名になった天台宗のお寺です。

 開基は、浄蔵貴所(じょうぞうきしょ)という天台宗のお坊さんで、学問や声明(しょうみょう=仏教音楽)、文学にも秀でたマルチな僧侶で、霊験無双の修験者でもありました。こんなエピソードがあります。

 天暦2(948)年、八坂の塔が北西に傾いてしまったそうです。その方角には御所があることから、宮中においてよくないことが起こるのではないかと大騒ぎになったようです。そこで、天皇は、法力を持つことで知られる浄蔵に塔を元通りにするよう命じました。さっそく浄蔵が塔に向かって祈祷すると、一晩で塔は真っ直ぐに元通りになったということです。

 他にも、熊野から戻ってきた浄蔵が京都の一条戻橋で偶然、父の葬列と出会います。父親に一目会いたかったと嘆いたのですが、生き返るようにと一心に祈祷したところ、なんと父が蘇生したというのです。傾いた八坂の塔を真っ直ぐにしたり死んだ父親を復活させたりと、マルチなスーパーマンですね。ちなみに、このお方は、京都「祇園祭」の山のひとつで「山伏山」のご神体でもあります。浄蔵が山伏姿で大峰入りするお姿となっています。

 ということで、八坂庚申堂は、くくり猿が有名で、有名人もたくさん来られていますけれども、境内から八坂の塔を見上げて、浄蔵さんのことも偲んでみてはいかがでしょうか。今日も楽しい一日を。