紅葉狩り

本堂横の紅葉
 どんよりとした曇り空の京都東山です。そろそろ雨が降りそうです。さて、あちらこちらで紅葉の記事がアップされていますね。今日の雙林寺の紅葉は赤や黄や緑が混ざっています。真っ赤ではないもののこういうのもいい感じですね。

 ところで、桜を見に行くときは、「花見に行く」といいますが、紅葉を見に行くときは、何と言われますか?普通に「紅葉を見にいく」でしょうか。それとも、「紅葉狩りに行く」でしょうか。何も狩らないのに疑問じゃないですか。

 私は、大阪府箕面市に「もみじのてんぷら」という銘菓があるので、それを作るために紅葉を持って帰るからなのかと思っていましたら、そうではありませんでした。ちなみに、そのもみじのてんぷらというのは、1300年前、修験道場であった箕面山で修行していた役の行者が、滝に映えるもみじの美しさを灯明の油(=菜種油)で、もみじをてんぷらにして表すことにし、旅人に振舞ったのが始まりだとされています。もみじに衣をつけて揚げた甘くて香ばしい、かりんとうっぽいお菓子です。

 それで、紅葉を見ることをなぜ「紅葉狩り」というのか、ということです。NHK番組「チコちゃんに𠮟られる!」によりますと、「狩り」は、野生の鳥獣を捕らえる狩猟のことですが、他にも、果物や山菜、魚介類などを採取するときにも使われる言葉です。「ぶどう狩り」「山菜狩り」「潮干狩り」などなど。そして、「狩り」という言葉は、実際に何かを獲るのではなく、「紅葉狩り」のように、季節の花や草木の美しさを観賞するときにも使われます。この意味は、何と平安時代の貴族の生活に由来しているそうなのです。

 平安時代の貴族は、自分の足で歩いて外出することは下品とされていたそうです。しかも外出は特別な用事がある時で、牛車や馬に乗らなければならず、平安京の外の山へ紅葉を見に行くことなどもってのほかだったそうです。特別な用事とは、寺神社へのお参り、お祭りなどの見物、鷹狩りなどです。とはいえ、山に出かけて真っ赤な紅葉を楽しみたいという思いは消えず、そこで思いついたのが、「狩り」という名目にして、山へ行くことにしたのだそうです。そうすれば実際には狩ることはないにせよ、獲物を探すことにして、山の中を自分の足で歩いて紅葉を楽しむことができます。貴族としての体裁を保ちながら堂々と紅葉を楽しめるわけです。こうして、紅葉を見にいくことを「紅葉狩り」と呼ぶようになり、やがて庶民の間にも使われるようになったということです。

 「獲物はいないか~」などと言いながら紅葉を鑑賞していたのでしょうかね。それにしても、昔も今も日本人は紅葉が大好きですね。今日も楽しい一日を。