捨身飼虎

 一応、晴れ空の京都東山です。今年は寅年という事で、寅に因んだお話があります。「ジャータカ物語」の中に「捨身飼虎」というお釈迦さまの前世でサッタ太子であった時の物語です。

 「ある日、サッタ太子が通りかかった崖下に、飢えた子連れの母親虎がうずくまっていました。見るからに、もう何日も餌にありつけず、子虎に与える乳も出ないほど痩せ細っているのです。そのことを悟ったサッタ太子は、崖下に身体を投げ出し、何と自らの身体を母子虎の飢えの為に与えて救った。」というお話です。「捨身飼虎」の図は、奈良の法隆寺に安置されている「玉虫厨子」の側面にも描かれています。

 サッタ太子が飢えた母親虎とその子虎を救うために自らを捧げたような事は、私たちには到底出来ませんが、悩みをお持ちの方、困っておられる方、悲しみに打ちひしがれていらっしゃる方などお困りの方がお近くにおられたら、そっと寄り添い、耳を傾けたりすることによって、勇気づけたり、安心を与えたりと何かその方のためにしてさしあげましょうというたとえ話ですね。伝教大師さまは、「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」と仰せです。

 ジャータカ物語やお経もそうですが、誇張された表現は一体何を言わんとしているのかを考えることが重要です。お坊さんはそこをわかりやすく言い換えたり、身近な出来事に絡めて法話という方法でお話をしています。お釈迦さまのお話をいかに毎日の暮らしに活かすのかが重要なのですよね。今日も楽しい一日を。