護摩の灰

 台風一過にて、青空が広がる京都東山です。さて、今日は第3日曜日の雙林寺月例護摩です。護摩では、護摩木の他にも五穀やお香を焚きますが、終わると灰が残ります。雙林寺ではこの「護摩の灰」を千代紙で包んで御守として授与しています。
 護摩の灰は、昔から「お浄め」「悪事災難除け」などの御守として、また、粘土状にして仏像の造立に使用されました。自然の物を燃やすので、灰と言ってもそんなに残りませんので、有名な寺院の護摩の灰は、貴重な聖灰とされたそうです。そうなると、偽物の灰を売る詐欺師が現れます。高野聖を装って、「これは弘法大師の修したありがたい護摩の灰だ」と言って偽物を押売りするのです。この者たちのせいで、護摩の灰は、江戸時代、「人をだまして金品を取る坊主」のことを指すようになったそうです。他にも、「街道を稼ぎ場とし、旅行者や巡礼者を騙す小悪人たちのこと」の代名詞でもあったようです。

 また、「ごまかす」という言葉があります。江戸時代から使われていた言葉で、現在キーボードで変換すると「誤魔化す」になりますが、それは当て字のようです。「ごまかす」の語源には、二通りの説があります。ひとつは、「護摩に紛らかす」で「ごまかす」です。願い事が書かれた護摩木は、燃やされてしまうと何が書いてあったか分からなくなってしまうところから「護摩化す」になったとする説。

 もうひとつは、「胡麻菓子(ごまかし)」を語源とする説です。胡麻菓子とは、江戸時代の「胡麻胴乱(ごまどうらん)」という中が空洞になっているお菓子のことで、見掛け倒しのたとえに用いられたことから、「ごまかす」と言うようになったとのことです。

 いずれにしても、護摩がよろしくない意味で使われるのは困りものですよね。今日も楽しい一日を。