百日紅

雙林寺百日紅
 今日もいお天気にて、朝から暑い京都東山です。さて、時節柄あちこちのお寺のSNSなどで、「百日紅」の話題が目につきますので、ここでもひとつ。

 まず、昨日になりましたが、8月29日の誕生花が百日紅でした。中国原産で、7〜9月頃にピンクや紫、白の花を咲かせます。ちなみに、雙林寺はピンク色ですね。その名の通り、「猿でも滑って落ちてしまいそうなほどツルツルした木」が名称の由来ですが、実際に猿が滑ることはなく、簡単に登るそうです。そのツルツルした樹皮は、つる植物に巻きつかれないためなのだそうです。

 百日紅の花言葉には「雄弁」「愛嬌」「不用意」「あなたを信じる」などがあります。中でも「あなたを信じる」には韓国に伝わる悲しい物語に由来するそうです。ある娘を残して、王子が「百日後には必ず戻る」と約束して旅立ちます。戻ってきた時にはすでに娘は亡くなっていました。やがて、娘の墓がある場所から木が生え、百日の間、花が咲き続けた。という伝説だそうです。しかし実際は、散れば咲き散れば咲きを繰り返し、百日間咲いているかのように見えるんですね。

 また、日本では、たくさんの俳句や短歌が詠まれています。

  • こもらばや百日紅のちる日迄  各務支考
  • 苔づける 百日紅や 秋どなり 芥川龍之介
  • 炎天の 地上花あり 百日紅  高浜虚子
  • 萩の花 既に散らくも 彼岸過ぎ 猶咲き残る さるすべりかも 正岡子規

 あちこちのお寺に百日紅があるのは、お釈迦さま誕生に関係する「無憂樹」の代用として植えられているそうです。インドにおいて無憂樹は、恋愛や結婚、出産に深くまつわるおめでたい幸福の木なのだそうです。

 ともあれ、百日紅は、私たちの目を長い間楽しませてくれます。その花言葉や由来する物語に思いを馳せて、各務支考さんではありませんが、いましばらく自粛生活で籠るとしますか。今日も楽しい一日を。