戸津説法

東南寺
 今朝も大雨の京都東山です。さて、8月21日から5日間、大津市下阪本にある伝教大師さまが建てられた寺「東南寺」において、法華経の説法会が開催されます。比叡山上から見下ろすと東南の麓に位置しているので、この名がつけられたそうです。また、この説法会を「戸津説法」「東南寺説法」と呼びます。戸津は、唐崎神社付近から、下阪本6丁目の大宮川辺りまでの約2kmほどの浜の古名のひとつで、戸津、今津、志津を総称して三津浜と呼ばれていました。

 そもそも、伝教大師さまが、鎮守山王日吉権現への報恩感謝と、ご両親への孝養回向、さらには地元の村人たちへ、法華経の説法をされたのが、戸津説法の始まりです。その後、弟子達が、大師への報恩のためにこの説法会を引き継ぎ、以来、説法会は坂本の生源寺、下阪本比叡辻の観福寺と東南寺の3ヶ寺でそれぞれ10日間ずつ、計30日間に亘って毎年夏に行われてきました。しかし、織田信長の比叡山焼打ち(元亀の法難・1571年)以降は、東南寺のみで行われるようになり、明治以降は、現在の5日間に短縮されましたが、天台宗や延暦寺の重要な法儀のひとつになっています。

 戸津説法を勤める説法師は、毎年6月4日、伝教大師さまの御廟所である浄土院で行われる長講会(伝教大師さまの御命日にあたり、報恩のために2時間有余の問答を行う法要)の席上、首座探題大僧正(天台座主猊下)によって、天台宗末寺およそ3000ヶ寺の住職の中から指名されます。生身のお大師さまに代わって法華経を講ずるという、すなわちお大師さまの事績を今日に伝える大変名誉な大役で、天台座主への登龍門ともいわれています。

 説法会の第1日目は、法華三部経の開経である「無量義経」、第2日目は、法華経第一ノ巻を中心に、第3日目は、「提婆達多品」「地蔵菩薩本願経」、第4日目は、「観世音菩薩普門品」、第5日目は、法華経の結経といわれている「観普賢菩薩行法経」についてのお説法があります。終わって、ご聴聞の方々と結縁の「お十念」、さらに結願回向のために放生供養の作法があります。(戸津説法のしおりなどから)

 私もお手伝いさせていただいたことがありますが、天台宗、延暦寺、地元、説法師さまの地元の方々ら、多くの人たちによって開催される説法会です。もちろん、一般の方も聴聞できますので、拝聴されてみてはいかがでしょうか。今日も楽しい一日を。