位牌について

 今朝は晴れ空にてセミがうるさく暑い京都東山です。さて、お位牌について簡単に書いてみたいと思います。

 「眞俗佛事編」という古い書物によりますと、「位牌は……我が親、先祖等の在世の位官、姓名を書きしるして、その神霊を斯に託し、よらしむる故に位牌と名づく」とあり、もともとは儒教が起源のようです。しかし今日では、仏教は勿論、神道でも一般に用いられる風習となりました。余生を終えますと、生前の俗名から新たに戒名を授かり、そして遺族は、お亡くなりになり仏さまとなられた方を尊び、その遺徳を慕い、弔おうと、木の牌に戒名を記して仏壇に祀り、生前と同様に話しかけ、お膳を供えて接するのです。

 位牌の型は大小様々ありますが、先端が丸く、蓮華の台座にのっているものが一般には多く用いられています。これは神仏合体の様式で、上部は神を礼拝するとき用いる笏をかたどったもので、神道の「霊代」からきています。台座の蓮華は仏教からで、仏像は蓮華の台座に座しておられるので、亡くなられた方も仏さまとなり蓮の台座にお座りになられたことを表わしています。また寺院では、台は須弥山、上は雲、中間は大空を表した雲形と呼ばれるものや、坊塔、屋根付きのものなどもあります。その他、一家の精霊(戒名)を白木の中板一枚毎に一霊ずつ記し、「○○家先祖代々之霊位」と書いた宮殿風の中に収めた繰出位牌というものもあります。

 いずれにしましてもお位牌を祀ることは、ご先祖さまを敬い、大昔からの教えを受け継ぎ、清く正しい生活を営んでいこうとする美しい宗教的風習であり、子供たちに教え引き継ぐよい機会になりますので、お仏壇にお位牌を祀ることはどの家庭にも欠かしてはならないことだと思います。今日も楽しい一日を。

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お位牌はどこから来たのか―日本仏教儀礼の解明