戒名について

 

 今日も暑く晴れ空の京都東山です。さて、みなさまのご先祖さまのお戒名は記憶されていますでしょうか。普段使わない上に長く難しい漢字なので覚えるには一苦労ですね。しかし、その戒名をよくよく見て漢字を眺めていますと、ご先祖さまの生前の面影を、巧みに表されていることに、気がつかれるのではないでしょうか。

 生前の名前を「俗名」というのに対して、亡くなられてからの名前を、「戒名」とか「法名」と呼んでいます。この戒名は、亡くなった人にだけつけられるものではありません。お寺の住職や、今は住職の子息が多いですが、得度を受けたお弟子さんのお名前も、実は戒名そのものなのです。ちなみに、私は智敬(ちぎょう)です。将来、死にましたら位牌には「智敬和尚」などと刻まれることになるのだと思います。戒名は、仏さまの教えを信じてよく守り、日々精進することを決意した人などに授けられる仏弟子の名前なのです。

 戒名には、生前のその人の徳を表す静かで品格ある文字やお経に出てくる語句を用います。基本的には次のように構成されています。「○○院ΔΔ××居士」「○○」が院号、「ΔΔ」が道号、「××」が法名(戒名)、「居士(男性の場合)」を位号と呼びます。

 道号は、生前の業績、徳行、仕事、人柄などを表す文字がつけられます。「道」というのは、仏道からきているそうです。さらに、その徳が極めて高い方には、院号をつけます。院号というのは、もともと位を譲って退かれた上皇が住まわれた御所の名をとって、白河院、鳥羽院などと呼ばれたことがはじまりなのですが、近年、一般人にも院号が用いられるようになりました。

 お経を理解すること、お経の中味を説明すること、お寺を建立すること、修行する人たちを尊ぶこと、仏さまの教えに生きる人たちと協力することなど、仏教を弘めるためには何ひとつ欠かせないことです。本来院号は、こうしたことに際立って尽力された人に、授けられるものです。そして一番下に、仏教信者として、信仰の深さにしたがって、居士・大姉・信士・信女の称号が授けられ、その人を表すことになるわけです。

 戒名は、その人の人柄をよく知っている住職が、適切につけてくれますので、逆に言えば普段からのお付き合いが大切なのです。お盆を迎えるにあたり改めて、戒名を拝んで、ご先祖を偲びましょう。今日も楽しい一日を。