寺の境内にしきみが植えられていることがよくあります。仏事には欠かせず、護摩の時にも房華、散華とたくさんのしきみを使います。
名前の由来には諸説あるようですが、しきみの実には猛毒が含まれていることから「悪しき実(あしきみ)」の「あ」をとって、「樒(しきみ)」と呼ばれるようになったのだとか。食べると死亡する可能性があるほどで、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されているそうです。しかし、仏事にこんな物騒な「悪しきもの」を使用するとは興味深いところです。
鑑真が日本にもたらし、空海が青蓮華の代用として密教の修法に使ったそうです。仏さまの世界には、青蓮華という花が咲いていて、しきみとよく似た葉の形をしていると考られていたようです。 しきみは一年を通して美しい緑色の葉をつけていて、手に入れやすいですし、季節の花と一緒に花瓶に差しておくと水が腐りにくく長持ちします。また、しきみはその毒性と強烈な香りを放つので、この香りによって獣を寄せ付けず、お葬式の際には、ご遺体が腐敗していくときに生じる臭いをわかりにくくさせるという役目も持っていたそうです。
このように、しきみは「悪しき実」にもかかわらず、万能のように思えます。ゆえに、こんな魔法のような植物は、仏さまへの御供に相応しいということになったのかもしれませんね。
今日も楽しい一日を。