右近の橘、左近の桜

 曇り空の京都東山です。きのうのひなまつりはいかがお過ごしでしたでしょうか。

 ところで、ひな壇には、橘と桜を配しますが、これは、御所の紫宸殿の前庭に植えられている左近の桜と右近の橘を意味します。青蓮院さんの宸殿の前庭にも右近の橘、左近の桜が植えられていますが、御歴代尊儀をお祀りされているからです。

 左近・右近というのは、左近衛府・右近衛府の略称で、左近は紫宸殿の東方(日が昇る方角)に、右近は西方に陣が置かれ、その陣頭のあたりに植えられていたので、この名称がついたのだそうです。もともとは桜ではなくて、794年の平安遷都のときに桓武天皇によって植えられた梅だったのだそうですが、960年、内裏火災の際に焼失してしまい、再建の折、梅に代えて重明親王の家の桜が植えられたのだそうです。橘は平安遷都以前、そこに住んでいた橘大夫という人の家に生えていたものだそうです。この話は『古事談』という中世の説話集に載っているようです。

 由緒がわかると桜も橘の見え方も違うかもしれませんから、桜の見ごろに合わせて、京都御所一般公開へ行ってみるとしますか。今日も楽しい一日を。