悠々たる三界は純ら苦にして安きことなし

しょうぐうさん
 曇り空の京都東山です。さて、今日は伝教大師さまのお言葉「悠々たる三界(さんがい)は純(もっぱ)ら苦にして安きことなし」です。

 伝教大師さまは19才で比叡山に登られ、それから12年間ひたすら学問と修行に励まれました。これはその頃に書かれた「願文」のはじめにあるお言葉です。悠々は「はてもない」かたち、三界(欲界・色界・色界)は、要するに我々の住むこの世界のことです。 世界は果てもなく広いけれども、結局は苦しいもの、思う様にならないものだと、大師は率直に仰ったのです。  

 たしかに、私たちの期待通りに行かないことばかりです。 何故でしょうか? 世の中は日々あらゆる物事が絶えず変化して行きます。ところが私たちは、そのことが頭では分っているのに、自分勝手な欲望を満たそうとします。いつまでも若く、美しくありたい、もっとお金持ちになりたい、出世して偉い地位に就きたい、 好きな人ばかりの世界、嫌いな人のいない世界がほしいなどと、それはそれは様々な欲望を持っています。たとえ一時はかなえられたとしても、いつの間にか消えて行きます。決して長続きもしなければ、まして固定化する筈はありません。たまたま思う様になった時は嬉しいのですが、やがて失われてしまえば、かえって、それが悲しみや悩みの種になります。

 「所詮、世の中は私たちの望み通りにはならないものだ」と若い青年最澄さまは見抜かれたのです。そこで苦ばかりだと嘆いていてもどうしようもありません。いかにそこを解決していくのかが根本的な大問題なのです。「伝教大師のお言葉より」今日も楽しい一日を。