花まつり

 曇り空の京都東山です。午後からは雨の予報です。4月8日は、お釈迦さまのお誕生日とされており、この日に「誕生仏」に甘茶をそそぐ行事を、「灌仏会」「降誕会」といい、一般的には「花まつり」といわれています。ところによっては、5月8日に行なうところもありますね。

 花まつりとは、四月の花の咲く季節にお釈迦さまの誕生を祝福することからそう呼ばれています。また甘茶をかけるのは、お釈迦さまが誕生なされた時に、九頭の龍が空中より清浄な甘露の雨を降り注ぎ、身体をお洗いになったという話に由来し、きれいなお花をかざった「花御堂」の中に誕生仏をおまつりして、甘茶をそそぎ供養をする行事となりました。なお、江戸時代までは、甘茶ではなく五色水と呼ばれる香水が使われていましたが、しだいに甘茶を甘露に見立てて用いるようになったといわれています。

 昔々のある夜、お釈迦さまのお母さまは、遙か天空から六本の牙をもった白い象がやってきてご自分の右脇から体内に入ってきたのを夢に見ました。お母さまはその時、偉大な命を授かったに違いないと気づかれたそうです。その後、お母さまが出産のために実家に帰る途中、 ルンビニー園に差し掛かり、美しい無憂樹の花を取ろうとした時に、右脇からお釈迦さまがお生まれになったといわれています。

 お釈迦さまは、お生まれになるやいなや、七歩歩いて立ち止まり、右手で天を指し、左手で地を指して「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん) 三界皆苦吾当安之(さんがいかいぐごうとうあんし)」と宣言されました。「この世の中でただひとり私が尊い。なぜならば苦しみに溢れているこの世界を必ず安らかにするからだ」という意味です。お釈迦さまは、苦しみの世界に生きている皆を救ってくださる尊い方なのです。私たちもまた、かけがえのない尊い存在であり、自分自身を大切にしなければいけません。これは、他の人を思いやる心を持つということでもあります。また「七歩」歩いたのは六道を超越する存在であることを示しているとする説もあります。

 いずれにしても、「花まつり」が私たちの教えの根本であるお釈迦さまの誕生をお祝いして、その教えを実践していける機会になれば幸いです。(天台宗シリーズ年中行事より)

 雙林寺でも誕生仏をおまつりして、お祝いしています。今日も楽しい一日を。