親鸞聖人 |
親鸞さまといいますと、雙林寺周辺にもゆかりの場所があります。例えば、お隣の東大谷祖廟さんは御廟所ですし、青蓮院さんは、お得度されたところです。少し離れますが、三十三間堂東側に所在する法住寺には「親鸞聖人そば喰いのお像」が祀られています。このお像にまつわるお話はおもしろいです。
親鸞さまが比叡山で修行されていた28歳頃のこと、親鸞さまは、天台宗とは異なる新しい宗教を発願し、毎晩暗い山を下って、京都烏丸六角にある六角堂へお参りに行かれ、明け方になって戻ってくるということを、100日間続けられていました。毎晩暗くなるとひそかに下山される親鸞さまを見て、他の修行僧たちからは「都にいる女の所へ通っているに違いない」と噂されます。その噂は師匠である慈鎮和尚さまにまで届き、優秀な親鸞さまがそんなことを行っているとはにわかには信じられません。
そこで、慈鎮和尚さまはある日の夜、「そばを振舞ってやろう」と修行僧らを集めて、出席をとることにしました。「範宴(はんねん=親鸞さまの修行時代の名前)」と呼びますと、「ハイ」という声が聞こえました。「範宴は下山などしていない。やはり弟子たちの間違いだったのだ。」慈鎮和尚さまは安心され、一同にそばが振舞われました。親鸞さまももちろん食べました。
翌朝、そんなことを知らない親鸞さまが比叡山へ戻ってくると、みんなが驚きます。昨夜いたじゃないかと。まさか親鸞さまが二人いるわけがない。では、そばを食べた親鸞さまは一体誰だったのかということになり、修行僧らは慌てて食堂に行きます。そして、彼らが見たものは、親鸞さまとそっくりで口元にそばが付いている木像だったのです。というお話です。
奇想天外な内容ではありますけれども、昼夜問わず修行されたという親鸞さまの労苦を偲ぶ事ができます。それで、そのお像の口元には今もそばがついているのか、いないのか、とても気になるところではありますが、私は拝んだことがありませんので、気になる方はお確かめに法住寺へご参拝されてみてはいかがでしょうか。今日も楽しい一日を。
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