楠木弁財天

 

楠木弁財天
 雨上がりにて曇り空の京都東山です。今日は、60日に1度巡ってくる「己巳(つちのとみ)の日」にて弁財天さまのご縁日となります。

 雙林寺では、本堂から南東あたりに位置する小さな祠にて楠木弁財天をお祀りしています。親しみを込めて弁天さんとお呼びしますが、「七福神」の一員として琵琶をお持ちになり、宝船に乗っておられるお姿はよくお見かけするところです。

 ところが、雙林寺の弁天さんは、8本の手があり、様々な武器をお持ちで、頭の上には「鳥居」と「宇賀神」をおのせになっておられる「宇賀弁財天」のお姿をされています。

 もともとは、サラスバティー川を神格化した神さまです。川を流れる水を、音楽や、流暢で巧みな話術に例えられるところから、音楽や言葉の神さまとされています。そこから解釈が広がって、芸事や学問の神さまとして信仰されるようになりました。また、それぞれの職業の技能や芸事、金運を助けてくださる「十五童子」という御使いの神童もおられます。

 さらに、水は豊作をもたらすことから、農業の神さまとしても崇められています。このことから、豊作が富と結びついて、財運、財宝の神さまにもなっておられるのです。

 寺伝によりますと南北両朝時代、新田義貞の軍兵が雙林寺に駐屯していたとき、足利尊氏軍からの攻撃に遭い、全山樹木とも大伽藍は灰燼に帰してしまいます。また、応仁の乱においても、再び雙林寺は焼失してしまいます。ところが、この場所の楠樹だけは、その2度にわたる大火災にもかかわらず、不思議と難を逃れたのでした。しかし、その楠樹も老齢になったため、枯れ死を助け風致を保存するために、昭和2年5月、信仰する有志の方々が、御神木として、ここに弁財天さまを安置することにしました。こうして、歴史的な災禍を逃れた長寿幸福の楠の樹齢は、私たちに健康と長寿を与えるとともに、弁財天の豊かなご利益を十方に施していただいています。

 弁天さまには、桶に水を入れてしきみを浮かべてお供えしますが、今ではペットボトルが御供物としてあがっていますよ。 おんそらそばていえいそわか 今日も楽しい一日を。