左近の桜、右近の橘

 朝方雪がちらついていましたが、雪交じりの雨に変わりました京都東山です。さて、本堂に雛人形を設えました。お大黒の嫁入り道具のひとつですが、今では半世紀の歴史ある雛人形になりました。

 ところで、雛段には、向かって左に橘、右に桜を置きますが、これは、御所の紫宸殿の前庭に植えられている左近の桜と右近の橘のことです。左近・右近というのは、左近衛府・右近衛府の略称です。左近は紫宸殿の東方(日が昇る方角)に、右近は西方に陣が置かれ、その陣頭のあたりに植えられていたので、この名称がついたのだそうです。もともとは桜ではなくて、794年の平安遷都のときに桓武天皇によって植えられた梅だったのだそうですが、960年、内裏火災の際に焼失してしまい、再建の折、梅に代えて重明親王の家の桜が植えられたということです。ちなみに、橘は平安遷都以前、そこに住んでいた橘大夫という人の家に生えていたものだそうです。

 雙林寺近くの青蓮院さんの宸殿前の庭にも桜と橘が植えられていますよ。ご参拝の折にご確認を。今日も楽しい一日を。