戒名について

 快晴の京都東山です。今日のこよみには、「苗字制定記念日」とあります。明治8(1875)年、明治政府が「平民苗字必称義務令」という太政官布告を出し、すべての国民に姓を名乗ることを義務附けた、ということです。

 苗字の話ではありませんが、我々は出家や亡くなると戒名を授けられます。戒名とは、戒律を受けた者に与えられる名前で、法名や法号と基本的に同じです。インドでは戒名らしき名前はみられませんでしたが、名前を重視した中国では、仏教に帰依し、入門した者に対して与えられるようになりました。

 これは、出家者だけでなく、在家者に菩薩戒が授けられた場合にも、菩薩名が与えられました。天台大師から隋の煬帝 (晋王広)が授戒した際にも、「総持」の名を与えたことはよく知られているところですし、日本においても、 鑑真が来朝して東大寺大仏像前で行った授戒において、聖武上皇に「勝満」の法名を与えられています。 また慈覚大師も同様の皇族に対する授戒と法名授与を行っています。いずれも菩薩として仏道にかなった行動を期待しての法名授与でした。

 しかし、日本では平安時代頃より、授戒には多くの功徳があると考えられるようになり、病気平癒を願っての授戒も行われるようになりました。また浄土信仰の広がりに伴って後生善処を願い臨終に際しての授戒が行われたり、また死後に追って授戒されることもありました。

 さらに仏式の葬送儀礼がおこなわれるようになり、死者儀礼と授戒(戒名)が結び付き、また中国式の位牌 (死者の官職や姓名、諡を記したもの)が導入されてきて、徐々に現行の戒名の形式(院号・位号等)が整備されてきます。そして江戸時代の檀家制度のもと、僧侶は葬儀を執り行うとともに戒名を与えることが必須とされるようになったのです。

 戒名は、仏教に帰依し仏道を歩み仏果を目指す者に授けられる大切な名前です。 生前であろうと死後であろうと、そこに違いはないのです。しかしながら、現在ほとんどの場合は、死後、葬儀において戒名が授けられていますが、生前戒名といって、生きているうちに戒名を授かることもできます。仏道にかなった暮らしに努めたいですね。今日も楽しい一日を。