巾着袋と大根

聖天御幕
 雨模様の京都東山です。明日からの連休は晴れのようです。毎日、たくさんの方のお参りありがとうございます。今日はメーデーですね。個人的には「芽が出る日」と縁起の良い日だと思っていますよ。

 そして、聖天さまのご縁日ですね。聖天さまは秘仏ですので、今回の特別公開でも公開はしていません。したがって、参拝者の方への説明は不要と考えていたのですが、どうも巾着袋と大根が描かれたお幕が気になる方がおられるようです。「これは大根と巾着袋の絵で、聖天さまへの御供物を表しています」「え、巾着袋を供えるのですか?」「いえいえ、実際には巾着袋を模した歓喜団というお菓子をお供えします」確かに巾着袋そのものはお供えしないですね、、、上手く伝えることは難しいことだと改めて実感した次第です。

 ちなみにこの御紋には二つの意味が含まれています。一つは御供物として、もう一つは聖天さまの御本誓を表しています。

 まず、聖天さまはいろいろなお供え物でおもてなしをさせていただく事によって、一層の御威徳を御顕わしになられますので、たくさんお供えすることを怠らないようにしなければなりません。とりわけ、歓喜団と大根とお酒がお好みです。しかし、歓喜団は高価なので、普段は代わりに甘いお菓子、かりんとうなどがおすすめです。

 歓喜団と大根は特に大切で、聖天さまの御本誓を表しています。巾着袋は、もともと砂金を入れておく袋で、財宝やお金を入れていました。つまり、この袋の中には、私達が願い求める財産、健康、立身出世、夫婦和合などすべての福徳が納められているのです。「願に応じて之を施さん」との御本誓から、「私たちにこの袋の中の福を与えてやるぞ」との御心が表されています。

 また大根は、滋養に富み、毒を消す作用があることから、心の悩みや苦しみ、不安などという心の毒や、貪瞋痴という信仰の邪魔をする心の毒を消し去り、安らかな心の落ち着きを与えて下さる事を表しています。このように、巾着には物質的、世間的な御利益が与えられるということ、大根には内面的な心の安心が与えられるという意味が込められているのです。

 ということで、これらの御紋を見た時には、聖天さまへの御供養を大切にしなければならないということと、聖天さまは物質、精神の両面にわたって私たちをお救い下さる御本誓をお持ちだということを再認識しなければなりません。そして、自分自身の普段の生活や信仰を反省すると共に、聖天さまへの報恩感謝を心に刻むことが大切なのです。今日も楽しい一日を。