雨も止んで快晴の京都東山です。時節柄、あちこちのSNSで紫陽花の記事がアップされていますが、紫陽花といえば、ドイツ人シーボルトのお話が有名ですね。
日本の鎖国時代、1823年8月に医師としてシーボルトが長崎に来日します。シーボルトのもとへ患者としてやって来たのが、長崎の遊女、其扇(そのぎ)さんで、シーボルトは一目惚れするそうです。やがて二人の間には「お稲」という女の子も生まれ、幸福な日々が過ぎて行きます。が、それも束の間で、1829年、帰国しようとしたシーボルトの荷物から、当時国外持ち出し禁止の物が見つかり、シーボルトは妻子を残したまま、国外追放の身となってしまいます。いわゆるシーボルト事件です。
その後、シーボルトは、日本の様々な植物を掲載した「日本植物誌」を刊行します。そこで、長崎の中国寺で採取したという空色の紫陽花を「Hydrangea otaksa」(ハイドランゼア オタクサ)と名づけて紹介したのです。「オタクサ」とは、「お滝さん」のこと。お滝さんとは其扇さんの本名です。つまり、シーボルトは、妻の名を呼ぶ発音をそのまま花の名にしたというのです。ただし、この学名は植物学の世界では有効なものではないのだそうです。
しかしながら、毎年5月から6月にかけて長崎で行われる「長崎紫陽花まつり」を「ながさき おたくさ まつり」と呼ぶのは、長崎の人々の紫陽花を慈しむ心と、シーボルト夫妻への愛慕が感じられますね。今日も楽しい一日を。