駐在布教

 今朝は、雲ひとつない快晴の京都です。

 昨日、布教会から駐在布教の案内が届きました。天台宗寺院は全国にありますが、地方で1つのグループになっていて、「教区」と呼んでいます。京都は「京都教区」です。その教区毎に布教師会という組織がありまして、毎年延暦寺根本中堂で布教活動をすることになっています。延暦寺の説明や法話などを参拝者にお話しするのです。時折、授与所で御守の応対もします。全国の教区から当番の布教師の方が1週間ほど泊りがけで来られるので、駐在布教といいます。つまり、根本中堂で参拝者にお話をしているお坊さんは、延暦寺のお坊さんではないときがあるということなんです。

 大体15分くらいのお話をするのですが、観光バス数台で団体参拝されますので、多い時は100人くらいを前にマイクをもって話します。自坊ではこのような大勢の人の前で話すことはないので、結構緊張します。頭が真っ白になるというのでしょうか、言葉が出ないとか、ド忘れとか、新人のときはよくありました。

 同じような話をしても、話し手によって、聴衆の反応が違うのも興味深いところです。笑っていただける話や話し方は大変難しく、芸人さんの凄さを感じたものです。決して笑っていただけるお話がいいということではありません。話の内容を考えたり、話し方を工夫してみたりと、いかに話を持って帰っていただくかと自己研鑽にもつながる活動です。

 そして、宿泊は総持坊という建物なのですが、玄関に一つ目小僧の絵が掲げられています。建物内には入れませんが、玄関を覗くと拝むことができます。「これは、元三大師良源の弟子の慈忍和尚の絵姿だという。慈忍は、良源のきびしい戒律の教えを身をもって実践し、他の修行僧にも指導していた。そして、死後も比叡山の戒律を守るため幽霊となり、夜中になると、この一つ目の恐ろしい姿で鉦をたたいて比叡山をまわり、里へ酒を買いに行こうなどとする不心得な僧たちを、こらしめたという。(大津のかんきょう宝箱より)」

 このお姿を拝するたびに、気が引き締まるのです。今日も楽しい一日を。