薬師如来縁日

 

 雨が上がって曇り空の京都東山です。気温は22℃程ですが、湿度が高く涼しいのか暑いのか微妙な体感です。二十四節気では「寒露(かんろ)」を迎え、草木に冷たい露が降りる頃となりました。明け方は多少ひんやりするようになってきました。

 さて、毎月8日はお薬師さまのご縁日となります。伝教大師さまは、延暦寺根本中堂に、国家の平安と国民の幸福のために大師御作の薬師如来像をご本尊として奉安されました。このことから、全国の天台宗寺院では、薬師如来像を本尊として祀られているところが数多くあります。

 雙林寺の薬師如来坐像(重要文化財)も、華頂要略などによりますと、伝教大師御作との記載があります。高さおよそ85センチメートルの一木造りで、奈良の大仏にも似たような実に堂々としたお像です。

 そのお姿は、右手は、私たちに手をかざしたような施無畏印(せむいいん)、左手には薬壷(やっこ)をお持ちになっておられます。薬壷とは、文字通り薬の壷のことで、その中には、からだの病気はもちろんのこと、心の病、社会の病など、すべてを治してしまうという何にでも効果があるという妙薬が入っています。

 ところで、根本中堂のお薬師さまの右手の施無畏印、4番目の指を少し前に傾ておられるので、そこから「薬指」と呼ぶようになったのだと聞きました。ところが、雙林寺のお薬師さまは、左手の4番目の指を曲げて薬壺をお持ちになっておられます。詳しくはわかりませんが、お薬師さまにとって、4番目の指には何か秘密がありそうです。

 それ以来、薬師如来像を拝ませていただくときはまず、4番目の指からと、気になって仕方ないんですよ、笑。今日も楽しい一日を。