初薬師

薬師如来(雙林寺蔵)
 ほんのわずかに薄っすらと雪が積もりました京都東山です。 今日は、初薬師となります。薬師如来さまは、病気平癒の仏さまとして、一般の人々からも、「おやくっさん」と呼ばれ親しまれています。正式には、「薬師瑠璃光如来」と申します。

 遥か東の彼方に瑠璃(るり=紺色の宝石)で出来ている浄瑠璃世界があり、そこで教主をされているため、そのように呼ばれています。ちなみに、その世界を歌ったものが昔から親しまれている歌曲「浄瑠璃」なのだそうです。

 そのお姿は、右手は、私たちに手をかざしたような施無畏印(せむいいん)、左手には薬壷(やっこ)をお持ちになっておられます。薬壷とは、文字通り薬の壷のことで、その中には、からだの病気はもちろんのこと、心の病、社会の病など、すべてを治してしまうという何にでも効果があるという妙薬が入っています。このお薬で私たちの毎日の暮らしの中で発生する悩みや苦しみを解消して下さいます。

 そのおかげにより私たちは、心身ともに健康となり、普段から正しい行い、修行ができるのです。貧困や、病気などのさまざまな苦しみの中では、それらが障害となり、なかなかうまく善行や修行をすることができません。そんな人びとに対して、その一切の苦しみを取り除き、修行に専念できるようにしてやろうということが、本当の薬師如来さまの慈悲なるおこころです。

 今日、このように薬師如来さまが広く人びとから信仰され、親しまれてきた理由のひとつに、病気平癒、無病息災などの現世利益がありますが、本来は、世のため人のためになることを行う場合に障害となる全般的な苦しみを、薬師如来さまにお縋りすることで解放されるということなのです。そのことにより、一生を安楽に過ごすことができるようになり、その結果、仏道を乗ずる、すなわち、わが国土を浄瑠璃の浄土に変えていくことになるのです。

 おん ころころ せんだり まとうぎ そわか 今日も楽しい一日を。