初不動

不動明王(雙林寺蔵)
 いいお天気の京都東山です。今日は一粒万倍日となります。一粒万倍日とは、「一粒の籾(もみ)が万倍にも実り、立派な稲穂になる」という意味がありますが、大切に育てないと立派な稲穂にはなりませんから、しっかりと徳積みをすることを再認識する日です。

 そして、初不動です。今日は日曜日なので、お不動さまをお祀りしている寺院では多くの方がお参りになるのではないかと思います。

 お不動さまのお顔にお姿はハッキリ言って怖いですよね。燃え盛る炎の前におられ、青黒いお肌に睨みつけるような鋭い眼、口元には牙が見えます。手にはロープと鋭い剣をお持ちになっておられ、我々が悪いことを仕出かすと、すぐに縛り上げられそうです。

 しかし、このような怒りのお顔をされていても、それは親が子をしつけるときの心と同じです。我々がいつもおバカなことをするので、何としてでも道を外さずに怠けることなく修行に励めよと叱咤激励されているのです。つまりは、慈悲のお心なのですね。お顔をよくよく拝ませていただきますと、憎くて怒っておられるお顔ではないことがうかがえます。わたしには、「もうえぇ加減、ちゃんとしろよ」とお説法されているように受け取れます。

 比叡山でお修行させていただいてる時のご本尊はお不動さまで、体育館のような道場の正面中央におられ、見守ってくださっていました。毎日2、3時間くらいの睡眠時間なので眠たくて辛くて逃げ出してしまい気持ちになったりしましたが、そんなときにはお不動さまのロープが今にも飛んできて引き戻され、剣を振るって「そんなことでいいのか」と気合いを入れられた気になり、おかげさまで無事に遂業することができました。

 優しそうな観音さまにお地蔵さま、病気にならないようにとお薬師さま、ご先祖さまのことは阿弥陀さまと、いろいろな仏さまとお付き合いしながら、今日も楽しい一日を。