祝い箸

 どんよりとした曇り空の京都東山です。さて、郵便局で年賀状を買いましたら「祝い箸」をいただきました。この祝い箸、お正月なので、「寿」と書いてある袋を使うのかくらいにしか思っていなかったのですが、いやいや、お箸にもいわれがあったのですよ。

 調べてみますと、まず、その家の家長が大晦日に、家族の祝い箸として袋毎に「寿」などの文字の下に家族の名前を書いて神棚にお供えします。家長本人のものは「主人」と書きます。さらに、家族が使うもの以外に料理をとるときに使う取り箸を用意して、それには「海山(うみやま)」と書きます。海のように深く、山のように高いことで、愛情や恩恵などが深くて大きいことのたとえです。つまり、歳神さまからのお下がりを家族全員でいただくということです。我が家では「組重」と書いていましたが、これは京都での書き方のようです。

 祝い箸は、両方の先端が細くなっていて、「両口箸」とも呼ばれます。一方は神さま用、もう一方は私たちが使うということで、"神人共食"を意味しているそうです。おせち料理は歳神さまへのお供物です。それをお下がりとしていただき、新年を祝い、歳神さまと家族みんなで共にお食事するというわけです。お箸が丸い棒状になっているのは「丸く収める」、割り箸のように「割らない」などの意味があって、お正月以外でもお食い初め、結婚式など、おめでたい日に使われます。

 素材は、丈夫で折れにくい柳の木が使われます。柳は水で清められた神聖な木とされ、春一番に芽吹くおめでたい木とされているそうです。そのため「柳箸」とも呼ばれます。その他にも、中央が米俵のように脹らんでいることから、五穀豊穣を願って「俵箸」とか、子孫繁栄を願う「はらみ箸」などとも呼ばれるようです。長さは、末広がりの八寸(長さ24cm)となっています。ちなみに、マナーとして「箸先五分、長くて一寸」の部分で食べ物を運ぶのがよいといわれています。

 ということで、最近では箸袋もカラフルなものが市販されるようになりましたが、お箸にも様々な意味を込めて神仏とともに暮らしているという日本人の文化ですよね。今日も楽しい一日を。