花月庵

花月庵
 秋晴れの京都東山です。京都十二薬師霊場会特別公開は次の日曜日22日までです。さて、ここしばらく、特別公開に合わせて雙林寺の紹介記事を綴っています。

 今日は、西行法師ゆかりの「花月庵」です。今回この建物でお祀りしている「西行法師僧像」を公開しています。この建物は、「西行堂」「西行庵」とも呼ばれていますが、全国にも同じ名称の建物がありますので、区別するため、冷泉為村の故事にちなんで、雙林寺では「花月庵」と呼称しています。

 花月庵は、おそらく室町時代始めに頓阿法師が西行法師像を祀るために建立されたとみられ、享保21年(1731)に、摂津池田(現・大阪府池田市)にあった李孟寺の天津禅師(?~1739)により、再興されました。

 その後、明和7年(1770)、冷泉為村が建物を修繕しました。庵中央には、為村筆の「花月庵」と書いてある横額が掲げてあります。西行は花と月を詠んだ句が多いことから為村がそのように命名したようです。また、西行法師像を納める厨子を寄進しました。厨子の扉には、為村自作の歌が記されています。

【二もとの言葉のかげに名に高さ正しき風を代々に残して】

【花は根にかへりし後の影古りて見ぬ世を偲ぶ三月二月】 

 そもそも西行法師は雙林寺の塔頭であった「蔡華園院」で修行していたとされています。寺に残る古い境内図には、菊乃井無碍山坊さんのあたりに記載があり、また、天保時代は月峰和尚が院主を勤めていたので、江戸時代には「蔡華園院」が存在していたことになります。廃仏毀釈で取り壊されたのかもしれませんね。

 庵内は通常非公開としていますので、この機会にぜひお参りください。今日も楽しい一日を。