お斎

しょうぐうさん

 曇り空の京都東山です。雙林寺界隈は、ほとんど外国人観光客で賑わっています。外国人だらけですよ。

 さて、新型コロナウィルス感染対策によって、しばらく、飲食は、はばかられていましたが、久しぶりに法事の後にお斎(とき)の席に呼んでいただきました。

 お斎とは、仏事の際にいただくお食事のことですが、「斎」という漢字には「つつしむ」という意味があり、本来は身を慎んで清浄な生活をおくることを意味します。「斎戒(さいかい)」といったりもします。

 もともとインドでは、出家者は正午を過ぎてからは食事をしないという戒律があり、食事をつつしむのが斎の由来となるわけですが、それが転じて正午以前に供養される食事を斎というようになり、これがさらに広く解釈されて、仏事の際の食事も意味するようになったのです。

 ところで、仏事、法事において一番に心掛けるべきことは、参列者一同で故人を偲ぶことでしょう。普段はなかなかお付き合いのできにくい遠方の方々と交わり、故人のことを語り合える食事の席は好適です。食事を差し上げることは大切なおもてなしですし、またそのような心情は、お斎の席でよく耳にする「故人への供養だから」という言葉にも通じるでしょう。

 伝教大師さまは、「道心の中に衣食あり、衣食の中に道心なし」という言葉を残されました。物質的な要求を優先するのではなく、仏道を求める心掛けの中にこそ、生活するうえで必要なものも自ずとついてきて、心の平安も得られる、とおっしゃったのです。少しでも心を改め、優れた先達(せんだつ)、諸先輩の言葉に耳を傾ける御席にしたいものですね。今日も楽しい一日を。