伝教大師御作です

木版画
 曇りですが雨が降りそうな京都東山です。今日は昭和の日ですね。この祝日は、過去に「みどりの日」と呼ばれていましたが、ほんとうに新緑が美しい季節です。併せて、ゴールデンウィークの始まりの祝日でもありますので、気持ちのいい自然の中で、楽しい大型連休を過ごされるのもいいかもしれませんね。雙林寺では、ウグイスの鳴き声の中、ご参拝していただけるかもしれませんよ。

 ところで、特別公開中は学生さんに仏像の説明をお願いしていますが、中にはその説明に素朴な疑問を投げかけて来られる方がおられます。説明の中に「この薬師如来坐像は伝教大師作と伝えられています」があります。実際にお大師さまが彫刻刀をもってお彫になったのかと質問されるのです。実際のところ根拠がわからないのならそういう説明はよろしくないのではないですかと。確かにそうなのですけれど、、、

 例えば、「華頂要略」の中には「伝教大師作」との記述がありますから、そういった史料を根拠に「伝教大師作」とご案内しています。この「作」が曲者です。普段の会話の中で、「Aさんは新しい家を建てたそうだ」と言ったりしまよね。「豊臣秀吉は大阪城を建てた」とか。この場合、Aさんも豊臣秀吉も実際にくぎを打って一から家なり城を建てたとは考えにくく、実際に仕事をしたのは大工さんということになりませんか。これと同じで、伝教大師さまが実際に彫刻刀でお彫りになったのかもしれませんが、仏像の設計に携わられたとか、費用を負担されて仏師に彫らせたなどとも考えられます。

 いずれにしましても、そのような解釈で「伝教大師御作」でございますので、よろしくご理解のほどお願いします。学生さんを困らせないでくださいよ。今日も楽しい一日を。