無常

雙林寺境内
 雨模様の京都東山です。雙林寺周辺の桜は満開で、いわゆるマンボウも解除されて、多くの花見客が訪れ賑わっています。それにしても日本人は、桜の花が大好きですよね。

 桜に限らず仏教では花を「無常」の象徴として有名な俳句と合わせて法話で語られます。良寛さんの句です。「散る桜  残る桜も  散る桜」

 今は満開でも、すぐ散り始めてあっという間に葉桜になってしまいます。花が咲けば散って実がなり、その実が土に落ちると芽が出て、その苗木はやがて育って樹となり、また花を咲かせる……というように、世の中も絶えず移り変わっています。無常というのは、常が無いということです。いつまでも変わらないものは何もないと仏教では説かれています。諸行無常などと言いますよね。

 春は、入学、卒業、就職、転勤、異動など、大きく環境が変わる人も多い季節ですね。新しい環境での生活に意欲的な方もおられるでしょうし、いよいよその時が来たかと終わりを知らされる方もおられるでしょう。また、楽しいことも悲しいこともいつまでも続かないですし、止まない雨もないですし、常に変わりゆくのですね。

 さらに花は誰の為にでもなく時期が来れば見返りを求めることなく周りの人を楽しませるように咲いて、静かに散っていきます。私たちも「忘己利他」の精神で一隅を照らして、限りある命を精一杯生きたいものです。桜を鑑賞しながら、こんなことやらあんなことやら、あれこれと物思いにふけってみるのもよいかもしれませんね。今日も楽しい一日を。