彼の岸へ続く白い道

 朝から雨の京都東山です。今日からお彼岸ですね。お彼岸はご先祖さまの供養と共に私たちも彼岸へ渡る六波羅蜜のお修行をしましょうという期間でもあります。

 「二河白道」という彼岸へ渡ろうとしたある旅人のお話があります。その旅人は西へ西へと歩き続き、此岸の果てまでやってきました。すると彼岸に向かって15センチくらいのとても細い1本の白い道が通っています。ところが、その道の両側には火の河と水の河があって行く手を阻んでいます。それぞれはてしなく広く底なし河です。

 南の火の河は火炎で白い道を焼き尽くしており、北の水の河は、波打って道を湿らせこれも白い道を通れなくしています。川岸などなく白い道を進むしかありませんが、戻るにも賊や悪獣が、旅人に向かって来ています。このままだとどちらへ進んでも死んでしまいます。

 途方に暮れていた時、東の方から「決心して、ここまま進めば、必ず死ぬようなことはない」と声が聞こえます。すると今度は西の方の彼岸から声がして、「一心に仏を信じてやって来くるがよい。おまえを火と水から守ってやるぞ」と聞こえました。実はこの東の声はお釈迦さまで、西の声は阿弥陀さまの声だったのです。旅人は二つの「行け」の声に励まされて、ためらうことなく白い道を進んでやがてほどなく阿弥陀さまの待つ彼岸に着いたということです。

 この話の火の河、水の河というのは煩悩のたとえです。火は嫉妬、怒り、憎しみですし、水は貪り、渇愛です。私たちは煩悩だらけですけれども、極楽へ行きたいと願うものです。仏さまを深く信じて修行すると、仏さまが励ましてくださり、真っ白な心になって極楽へ導いてくださるということですね。今日も楽しい一日を。