お葬式

 曇り空の京都東山です。ようやく近畿地方は梅雨入りとなりました。今日は、これからお葬式を執り行いにちょっと遠方ですが、セレモニーホールへ参ります。

 天台宗の葬儀ではどのようなお作法をしているのかと申しますと、まず、お導師が亡くなった方に対して、剃髪の儀式をして、ひとりの僧侶、成仏を目指す修行者に仕立てます。そして、仏・法・僧に心から帰依する戒めを授け、阿弥陀さまと極楽世界を説いた「阿弥陀経」を読経し、引導の儀式をもってあの世へ送り出します。式の途中、赤いテープが巻かれた棒を導師が持ちますが、それは松明を意味し、荼毘に伏すお作法です。

 導師は家族の方とも相談して戒名を考えますが、戒名とは、出家して修行する者となった、新しい名前となります。亡くなった方の生前のご活躍や人柄などが分かるようなお名前をおつけします。

 参列者はこの新たな修行者の誕生に心を込めて「南無阿弥陀仏」と念仏し、その功徳を、亡くなった方に回向し、門出のはなむけとします。葬儀はこの世からあの世へ旅立たせる厳粛な仏教の儀式なのです。

 終わってからは、お斎(おとき)の開催です。久しぶりに親族一同が集まることでしょうから、近況報告をしたり、子供たちの成長を喜んだり、故人の話で偲んだりするべきです。本来は導師をお招きするのですが、普段のお付き合いによって、粗飯料でもって招かない場合もあります。

 お葬式は、単なる儀式だけではなく、亡くなった方、そして、亡くなった方とお付き合いのあった方々、さらには日頃疎遠になっているかもしれない親族らに、感謝を込めて恩返しをするときなのです。そういった意味で、お葬式を手間だとか簡単に済ませたいなどと言うことでないのです。人は誰かしらのお世話になりますし、お互いさまなことだと思います。 命終決定生極楽 面奉弥陀種覚尊 今日も楽しい一日を。