蚊帳

 快晴の京都東山です。午後からは35℃まで気温が上がる予報となっています。まだまだ暑い日が続きそうです。

 さて、今日は「蚊の日」となります。1887(明治30)年のこの日、イギリスの細菌学者であるロナルド・ロス博士が、ハマダラカの胃の中からマラリアの原虫を発見し、ノーベル賞を受賞するほどの世界的な発見であったので、「世界蚊の日(ワールドモスキート・デー)」と呼ばれているそうです。それにしても、蚊にも胃袋があるなんてびっくりですよ。

 ところで、子供の頃には蚊帳があったことを思い出します。検索してみますと、平安時代初期に編纂された「播磨国風土記」に応神天皇が播磨 (現在の兵庫県姫路市あたり) を巡った際に、賀野の里 (かやのさと)で蚊帳を張ったという記録が残っているそうです。古代エジプトでは、植物の繊維を使って蚊帳のようなものが作られ、クレオパトラも愛用していたとのことですから、歴史は古そうですね。

 もともと蚊帳は絹や麻が使用された高級品だったものが、江戸時代になってようやく庶民も手に入れられるようになったそうです。よく見かける、萌黄色(日本の伝統色で、鮮やかな黄緑色)の網に赤い縁取りのデザインは、寝具の会社として有名な西川株式会社の江戸時代初期の2代目当主がそのデザインを考案したそうです。

 ある日、木陰で休憩中に、緑色のつるくさが一面に広がる野原にいる夢を見たそうで、そこから「涼味あふれる緑に囲まれたシーンを目にすれば、蚊帳の中にいる人の気持ちを和ませ、爽快な気持ちにさせるであろう」と考え付いたのだそうです。そして「近江蚊帳」として売り出すやいなや、爆発的ヒット商品になり、後世に受け継がれるデザインとなったとのことです。

 現代では、網戸やエアコン、その他虫除けアイテムもたくさん揃って、蚊帳は見かけなくなりましたが、あの何とも言えない空間が一瞬にして出来上がる蚊帳は風鈴、蚊取り線香、うちわなどとともに夏の風物詩として欠かせないものですよね。今日も楽しい一日を。