初薬師

薬師如来坐像 雙林寺蔵
 晴れ空の京都東山です。さて今日は、初薬師となります。今年は「四緑木星」の年で、守り本尊が、薬師如来さまとされています。

 天台宗の宗祖伝教大師さまは、延暦寺根本中堂に、国家の平安と国民の幸福のために大師御作の薬師如来像をご本尊として奉安されました。このことから、全国の天台宗寺院では、薬師如来像をご本尊としてお祀りされているところが数多くあります。雙林寺もそのひとつです。

 雙林寺の薬師如来坐像(重要な文化財)も大師御作で、805年の創建当時からご本尊としてお祀りされています。高さおよそ85センチメートルの一木造りで、実に堂々としたお像です。

 そもそも薬師如来さまは、病気平癒の仏さまとして大衆からは「おやくっさん」と呼ばれ親しまれています。「薬師如来」のほかにも「瑠璃光如来」「大医王仏」などとも呼ばれます。遥か東の彼方に瑠璃で出来ている浄瑠璃世界があり、そこで教主をされておられます。左右の脇侍に日光菩薩、月光菩薩がおられ(薬師三尊と呼びます)、十二神将を眷属として従えられています。

 右手には、私たちに手をかざされているような施無畏印、左手には薬壷(やっこ、やくこ)をお持ちになっておられます。薬壷とは、文字通り薬の壷のことで、その中には、からだの病気はもちろんのこと、心の病、社会の病など、すべてを治してしまうという何にでも効果がある妙薬が入っています。このお薬で私たちの毎日の暮らしの中で発生する悩みや苦しみを解消して下さいます。

 このように薬師如来さまが多くの人びとから信仰され、親しまれてきた理由のひとつに、病気平癒、無病息災などの現世利益がありますが、本来は、世のため人のためになることを行う場合に障害となる全般的な苦しみを、薬師如来さまにお縋りして解放されようということなのです。つまり、修行の障害となることを解消していただくことにより、一生を安楽に過ごせるようになり、ひいては、仏道に乗じて、わが国土を浄瑠璃の浄土に変えていくことになるのです。いつもいいますけれど、願いが叶ってからどうするのかが大切なのですよね。今日も楽しい一日を。