薬師如来さまご縁日

 

 ようやく雨が上がって曇り空の京都東山です。風が強いです。

 さて、今日はお薬師さまのご縁日となります。伝教大師さまは、延暦寺根本中堂に、国家の平安と国民の幸福のために大師御作の薬師如来像をご本尊として奉安されました。このことから、全国の天台宗寺院では、薬師如来像をご本尊として祀られているところが数多くあります。

 雙林寺の薬師如来坐像(重要文化財)も、華頂要略などによりますと、大師御作です。高さおよそ85センチメートルの一木造りで、奈良の大仏にも似たような実に堂々としたお像です。

 そもそも薬師如来さまは、一般の人から病気平癒にご利益を頂戴できる仏さまとして「おやくっさん」と呼ばれ親しまれています。「薬師瑠璃光如来」とも申しまして、遥か東の彼方に瑠璃で出来ている浄瑠璃世界の教主をされています。

 そのお姿は、右手は、私たちに手をかざしたような施無畏印(せむいいん)、左手には薬壷(やっこ)をお持ちになっておられます。薬壷とは、文字通り薬の壷のことで、その中には、からだの病気はもちろんのこと、心の病、社会の病など、すべてを治してしまうという何にでも効果があるという妙薬が入っています。

 ところで、根本中堂のお薬師さまの右手の施無畏印、4番目の指を少し前に傾ておられるので、「薬指」と呼ぶようになったのだと聞きました。ところが、雙林寺のお薬師さまは傾けておられないのですが、左手の4番目の指を曲げて薬壺をお持ちになっておられるのです。お薬師さまにとって、4番目の指には何か秘密がありそうです。

 以来、薬師如来像を拝ませていただくときはまず、4番目の指からと気になって仕方ないんですよ、笑。今日も楽しい一日を。