花まつりの甘茶

 曇り空の京都東山です。今日は「一粒の籾が万倍にも実り、立派な稲穂になる」という一粒万倍日となります。何かを始めるのによい日とされていますが、もともとは「陰徳を積み慈悲を施し、善事を行う日」のことで、種を大切に育てるように、つまり、「積善の家に余慶あり」ということを認識する日でもあります。

 さて、4月8日は、いわゆるお釈迦さまのお誕生日で「灌仏会」「誕生会」「仏生会」「花まつり」などと呼ばれる法会が営まれます。お釈迦さまの誕生仏に甘露の雨に見立てた甘茶を潅いで、お祝いするのですよね。

 灌仏法要は、日本でも平安時代初期より宮中において行われていましたが、江戸時代には各地方の寺院でも行われ、庶民も親しむようになりました。この頃から甘露(かんろ)に見立てて甘茶がそそがれるようになり、その甘茶を竹筒などで持ち帰って飲むと、病気にならないと言われていたようです。現在でも漢方薬に使われています。

 甘露水(かんろすい)とは、昔のインドでアムリタと呼ばれ、不死・天酒とも訳されます。インド神話では、神々の飲物で蜜のように甘く、飲むと不老不死になるとされていました。

 仏教では、お釈迦さまの教えを喩える言葉として用いられます。

【世尊慧燈明 我聞授記音 心歡喜充滿 如甘露見灌】

 ~世尊は智慧の灯明です 私たちは仏と成る予言を聞き 心は喜びに満たされました。まさに甘露がそそがれるごとく幸福なことこのうえありません~

 花まつりに参加された際には、誕生仏にそそぐだけではなく、ぜひ甘茶を飲んでみてくださいね。今日も楽しい一日を。